アパレルメーカーとは

僕が大学を卒業して入った会社で、最初に社長から問い掛けられた言葉は「梅崎君はアパレルメーカーってどういう仕事だと思うかね?」だった。

おろおろしながら的を得ない回答をしたようで、社長は不満そうにこう仰った。

「自社でリスクを持ち、生産背景も自社で抱え、在庫を持ち、オリジナル商品を企画・生産する衣料品製造卸会社がアパレルだよ」

僕は普通の大学生で、この会社に就職したのもただ単に早く内定が出たからに過ぎず、アパレル業界について大した知識も熱い思いもなかった。

なので、正直言って、アパレルメーカーとはなんぞや?と言われても、入ってみて初めて「ああ、こんな業種があるんだな」という感じだった。

僕が新卒で入社した会社は、小竹正株式会社といって、福岡の繊維業界では名が通った、業歴の長い会社だった。

無借金経営を貫き、財務も非常に万全な会社だった。

僕は営業職で入社したので、まずは商品化されたモノを小売屋さんに卸す営業の役目、プラス自分が販売した商品を出荷、取引先の入金管理が主業務だった。

職場にはデザイナー、パターンナーがおり、その人達が企画・デザイン、パターン引き、工場とやり取りをし商品化していた。

僕のアパレル原体験はあの時で間違いはない。

今は「アパレルってどんな仕事ですか?」と聞かれて、ふと考えてみて、その変質振りに驚く。

今どきのアパレルと呼ばれる会社の多くは下記のような感じだ。

○社内にパターンナーがいない

○企画が決まったら、あとは商社の生産部門に依頼。

○企画さえも商社が提案し、そこから選ぶ。

○自社リスクでは在庫せず、お客さんから依頼があった分の数量のみ生産する。

○決まった生産背景がない。

挙げだしたらたくさんあるけど、これ以上書くと辛辣になりそうだから、この辺で止めておく。

正直、今あの頃の社長が仰ったような体を成しているアパレルなんて、果たしてあるのだろうか?といつも思う。

アパレルって、今後どうなるんだろう?と常に思う。

でも、そういう僕も、あの時の社長からお聞きしたような会社を運営しているとは言えない。

時代に合わせて、変化(進化?)していくのはモノの理だが、本当に正しい方向に流れて行ってるのかな?そう思いながら、僕は29年程この商売でメシを食っている。

うちはアパレルです、と堂々という人に問いたい。

貴方は本当にアパレルですか、と。

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