僕は以前勤めていた会社で事業部の長を務めていた。
今日はその時の一コマの話。
その会社では事業部の長は「MD」と呼ばれ、その事業部の全てを任され、また責任を負って
いた。
業務の中で事業部で使う経費も、MDがある程度管理し、用途を決め支出をしていた。
ある日僕が社長と来期の数字の打ち合わせをしている時だった。
「これだけ売ろうと思うと展示会費用がこれだけ掛かり、全員の出張経費がこれだけ掛か
ります。
海外への生産の出張経費も複数で行かなくてはいけないので、これだけ掛かります」
社長は黙って頷かれていた。
「これだけ売上を上げても経費で出て行きます、、何で経費ってこんなにかかるんでしょ、、」
僕はその頃売上が右肩上がりに上がって行く中で、ただそれに比例していく経費の増大が
悩みの種であった。
独り言のように僕が発した言葉に、今まで静かに僕の話を聞いてくださっていた社長が、
静かに口を開かれた。
「そりゃあんた使うからよ」
僕は30半ばだったが恥ずかしかった。
それは考えもせずに言葉を社長の前で発した事、社長に愚痴めいた事を言ってしまった事、
そして当たり前の事に気付かなかった自分へのバカさ加減でイヤになった。
カネを使うから、経費がかさむ。
当たり前の事だ。
早速、展示会に使う内装代、展示会に出張する人間の数の精査、海外へ出張に行く人間の
数と頻度の精査を行った。
もちろん経費は減った。
当たり前だ。
経費は最小で、売上を最大にする。
この基本を、社長の言葉が僕に思い出させてくれた。
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