ちょうど20年前の1991年6月5日、東の聖地・東京、後楽園ホールで一人のレスラーが
デビューした。
今月いっぱいで国内のレスリング活動を引退することになった、ディック東郷だ。
最初のリングネームは、「巌鉄魁(がんてつ・さきがけ)」、その次が「SATO」と
マスクマンに変身した。
その頃より、変わらないキレを見せるセントーンは一級品だ。
僕にとって、東郷がレスラー人生をスタートさせた「ユニバーサルプロレス」は特別だ。
あの一番プロレスにのめり込んだ時代を、最も熱く思い出させてくれる。
そんな思い入れたっぷりの東郷の引退に、20年前からの同志が駆けつけてきている。
嗚呼、プロレスはやはり壮大な歴史小説、戦国絵巻、そして友情の物語だ。
今の若い世代のレスラー達が20年後、同じようなドラマを紡いでくれるとは思えない。
先日の2011年の6月5日の後楽園ホールで、東郷は歴史的な邂逅を果たした。
東郷のみちのくプロレスにおけるラストマッチ、もちろん相手は「東北の英雄」グレート・
サスケだ。
もちろん、東郷とサスケ、いやMASA・みちのくとも一緒に20年前にユニバで冷や飯を
食った仲だ。
お互いの20年をぶつけ合い、確認しあう試合、それは崇高であったはずだ。
そこに若いレスラー達が茶々を入れる。
それをリングサイドで熱く見つめていた一人のレスラーがリングへと駆け上がり、二人を
救う。
現・沖縄プロレスのスペル・デルフィンだ。
大阪プロでの別れ以来の恩讐が、全て霧散した瞬間だった。
その瞬間、この20年、本当にこのプロレスを支持していて良かったと思った。
他のスポーツ、エンターテイメントなんかくそくらえだ。
ユニバーサル、みちのく、大阪、K-DOJO、闘竜門、沖縄その他にも色々な団体が
あった。
TAKA、船木、テイオーに浜田、他のみんなも集合する。
20年という時間が色々な人間ドラマを奏でてくれた。
もちろん、東郷はリタイアするが他のレスラーはファイトし続ける。
今でも20年前の博多スターレーンで、サスケがリングサイドに駆け寄った私の手を握り
返してくれた時の、あのグローブ越しの熱気を信じている。
最後にみちのくプロレスはもちろん東北。
東北よ、永遠なれ。