プロレス名曲列伝「GRAND SWORD 小橋健太のテーマ」 

 小橋健太というレスラーは美しい。

ごつい肩から腕の筋肉を見ると小橋の人生が見えてしまい、それをすごく美しく感じる。

試合終盤、相手を抱え上げリングにボディスラムでしたたかに打ち付ける。

小橋は勝利を確信し、「青春の握りこぶし」を力強く握りしめ、颯爽とコーナー最上段へと
駆け上がり、宙に舞う。

小橋の必殺技である「ムーンサルトプレス」のムーブだ。

私はこの必殺技を見るといつもドキリとする。

それは相手にトドメをさすためとはいえ、自分のボロボロの膝を激しくリングに打ち据えな
ければならないからだ。

ムーンサルトプレスの使い手は、武藤敬司もしかり、膝はズタズタだ。

それでもファンが求めれば飛ぶ。

プロレスラーの凄さだ。

小橋健太というのは、今は亡き御大・ジャイアント馬場が存命中の全日本プロレスから、
そのキャリアをスタートさせている。

最初はスポーツのバックボーンもなく、一練習生だったそうだが、ひた向きな練習量は
群を抜いていたという。

ある日、小橋のあまりの練習の虫ぶりに口さがない先輩レスラーが嘲笑したらしい。

そこにたまたま通りかかった、天龍源一郎がこう言ったそうだ。

「お前たち、その内こいつに食べさせてもらうようになるぞ」

その日はすぐに訪れ、小橋健太はトップイベンターとなる。

今でも3冠を取った瞬間の興奮を、僕は忘れてはいない。

そして団体の分裂。

その後のNOAHに移籍してからの癌の発症・長期欠場・克服しての復帰、そして怪我に
よる長期欠場、そして再復帰。

正直、浮き沈み激しく、本当に努力が報われているのか、神様は何を見ているんだと思う
こともある。

癌の発症の時は、先輩ジャンボ鶴田のように小橋ももうダメなのか、そう思ったことも
あった。

でも小橋は乗り越え、常に帰ってきてくれた。

我々ファンを決して裏切らない、彼のその姿勢が全てのプロレスファンから支持される
理由だ。

そんな小橋健太の人生の全てが詰まっているような、悲しげだが力強いこの曲のメロディが
僕は大好きだ。

そしてそれを背に受けながら、リングに向かう小橋健太は非常に美しい。

GRAND SWORD 小橋健太のテーマ

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