会社に入社して、初めて配属になった事業部の上司のことを、
私は信頼して、尊敬していました。
彼の言うことは、ほぼ服従していましたし、信頼し、疑いも
しませんでした。
彼も、私に全幅の信頼を置いており、無償の関係がお互いに
あると思っていました。
ある時期まで本当にそう思っていました。
私は今でも他人に言えない、彼のために行ったこともありますし、
私には不利益な結果となりましたが、彼に尽くした事柄も、
多数ありました。
ある日、私は会社の寮から引っ越すことになりました。
その時に、ものすごく気楽に彼に依頼しました。
「部長、連帯保証人じゃなくて、普通の賃貸不動産の保証人に
なってもらえませんか?」
その時の彼の反応を今でも覚えています。
苦い顔をして、ちょっと考えさせてくれないかと言われました。
正直その時は何も思いませんでした。
その日の夕方、会社の専務に呼ばれました。
専務の元に行くと、部長が座っていました。
そこで部長から、保証人にはならない旨を言われました。
部長という立場から、他の人間の手前もあるからということ
でした。
私は、今でもその時、自分はどんな凄い表情をしていたのかなと
思い起こします。
俺たちの関係はそんなものだったのかよ。
あんたのやばい部分を、僕は引き受けて悪者になってきた
じゃないか。
私に取っては、全く考えてもいなかった反応でした。
私と部長の関係だったら、何も言わずに、例え会社の手前が
あっても、会社には内緒でも引き受けてくれると簡単に
思っていたのです。
私はそれぐらい部長との関係を大切に思っていました。
次の日から、自分の価値観を持たなくてはと、新たに努力を
始めました。
他人の言うことを全て飲み込まず、精査する癖をつけようと
思い始めました。
「今でも私だったら、あの時の状況だったら、必ず二つ返事で
引き受ける」
確信していますし、絶対にぶれません。
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