ある日、出張先から定時連絡を会社に入れたときでした。
(14年ほど前には、まだ携帯電話は普及していませんでした)
いつもは売れるまで絶対に帰ってくるなという部長が、
「6時までに会社に戻って来い」
ということでした。
何かやらかしたかと思いながら、ビビリつつ帰った私に、
部長が一言、
「明日Gブが倒産する。夜8時に商品を引き上げに行くから」
部員4人で夜7時半に会社を出ました。
会社の出口に社長が居ました。
「何事も経験だから、よろしく」
そう社長に言われると、いつもとは違う業務だと感じました。
店に着くと、早速ダンボールパッキンに商品を詰め始めました。
この間まで明るかった女性のオーナーも涙目で、誰一人言葉を
発せず、ひたすらうちの商品をパッキンに詰めました。
2時間ほどで終了しました。
店を出る際に、オーナーから、
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
と言われ、深々とお辞儀をされました。
私は直接の担当ではなかったので、あまりオーナーと喋った事は
なかったのですが、来社された時は、いつも明るく笑いの絶えない
方だという印象でした。
今まで、年上の方から頭を下げられたことの無い私は、初めての
経験に戸惑い、それにいつもの印象とオーナーが違いすぎるので、
かなり滅入ってしまいました。
「お疲れ様でした!」
私は思わず、大声で返事をし、深々とお辞儀をしていました。
社長の言う通り、勉強になった出来事でした。
目次