以前お世話になった人のお役に立ちたい。
そう思うのは去って行った側のエゴだ。
去られた側としては憤懣やるかたないはずなのだ。
かくいう私も以前の職場に何かあったら、微力ではあるかもしれないが、お手伝いしたいと
常に考えている。
しかし、先方にとっては大きなお世話であることは間違いない。
それは分かっていながらも、いつか邂逅の日を待ちわびている自分がいる。
2000年、馬場亡き後の全日本プロレスは分裂する。
崩壊の危機に瀕した全日は、10年前に離脱した天龍源一郎へ復帰のオファーを送る。
その時の天龍の心境は如何なるものだったのか。
私は先述した気持ちであったと思う。
天龍復帰の瞬間は震えた。
残念ながらyoutubeの動画は削除されてしまったが、馬場元子夫人が天龍の名前をコール
した時の後楽園ホールのどよめきは凄まじいモノだった。
天龍のテーマ曲「サンダーストーム」が雷鳴と共に轟いた瞬間、本当に全日の危機に雷鳴が
轟き、天空から龍が舞い降りたようなイメージであった。
観衆は大歓声で古巣への復帰を祝った。
全日はこのムーブメントで一息つくことが出来た。
ただ、その時に一部の観客から「ふざけんなよ」という声があったのも事実だ。
90年の天龍を含めた大量離脱でも全日は一時崩壊の危機があった。
それを支えたファンは許せなかったに違いない。
プロレスファンは許容量がいびつである。
天龍の新生・全日での戦いはこういう声との戦いであったように思う。
我々天龍をずっと見続けてきたファンと古くからの全日のファン、それと武藤が連れてきた
新しいファン。
その全部の支持を集める事は10年前の様には出来なかった。
それを歯がゆく思いながら、苦悩の中で戦う天龍の姿がよく見られた。
何で分かってくれないだ。
天龍は思い、悩んでいた。
最後はフェイドアウトのように全日を去ってしまう。
全盛時を知るファンとしては寂しい限りであった。
難しいね。
ノスタルジーだけでは物事は真っ直ぐに進まない。
独りよがりでは上手くいかない。
でも僕は、そんな不器用で無垢な天龍源一郎が大好きだ。