去年の今頃、地場の老舗の婦人服チェーン店が倒産した。
地場ではそこそこの規模だった。
その結果、そこの社員の方々が大勢無職になられた。
女性はまだ店頭の販売の職があったから、それ程でもなかったが、男性が大変そうだった。
結果、男性は自分で小売店を始めるなり、金主を探して小売店を始めるなりと、生きる道を
模索するしかなかった。
最初の内は順調のようだった。
場所もある程度良い場所を借りて、そこそこの家賃を払って、売上もそこそこのように
見えた。
その時に口をそろえてこう言われた。
「世の中の売れ筋をきちんと品揃えしていったら、間違いないはず」
仕入先も旧来の所ばかりで、変えようとはしていなかった。
1年後、そのお店は次々と閉店していった。
「売上はあるんだけど、全然利益が出ない」
「家賃が高すぎた」
みんなそう言って、去って行った。
僕は思った。
大手にいた人間ほど、過去の経験則にとらわれる。
そこから新しく改善したり、成長できない。
そして粘りがなく、頓智が利かない。
自分の過去にしか、すがるものがない。
僕から言わせると、売上が高くても粗利が低い、仕入原価が高いなら儲からないのは
当たり前。
家賃、人件費などの経費が高いなら、売上があっても儲からないのは当たり前。
売れ筋では競合店が多すぎ、消耗戦が始まってしまう、それをいかに避けるか。
それらは昔から基本としてあったが、近年の不景気でますます顕著になってきただけだ。
それを彼らは何も知らずに、大きな会社でノンビリしていたから知らないのだ。
それも知らずに、洋服屋だったらやれるだろうと思ったのだろう。
世の中はこの10年で大きく変わったのだ。
そして、それに対応できなければ、退場するしかないのだ。
ついでだが、女性たちも次の職場に馴染めなかったようだ。
やはり、アパレルという商売は因果な商売だ。
ガタイが大きければ大きいほど、病巣も大きい。