20年前の思い出です。
新入社員として配属が決まり、3か月ほどの物流での出荷業務を兼ねたOJTも終わり、
いよいよ今日から営業マンとしての一日目という日でした。
僕は部長から既存のお取引先へ納品と営業に行って来るように命じられました。
私はそそくさと準備を済ませ、部長に出発前の報告をしに行きました。
「部長、それでは行って参ります」
「おう!頑張って行って来いよ!」
「はい!ところで今日お伺いする先は私は場所を知らないのですが、地図か何か書いて
頂けませんでしょうか」
部長の目が奥底でキラリと光りました。
「お前さあ~、大学卒業している訳やろ!」
「はあ(何か関係あんのかな)」
「地図も営業車に積んであるやろ!お前には目と耳と口も付いているやろ!」
「、、はい(びびってる)」
「東京のど真ん中に行って来いっていう訳じゃなくて、佐〇のド田舎に行って来いって
言ってるんやろ!そこまで行って、地図を片手に探して、分からなかったらその辺を
歩いている人に聞いて行って来い!!」
「はい!」
「自分で考えろ、頭使って!早く行け!!」
僕は慌てて会社を飛び出し、ほとんど初めて使うような九州地図を使いながら、道に何度も
迷いながら、分からない時は歩いている人に聞いて、何とかお客様のお店に着きました。
納品して、商談しながらお客様と話をしている時に、どうやってここまで来たのかという
話になりました。
僕が部長にこう言われて、何とか辿り着いた話をしたところ、お客様は大変感銘を受けら
れて「それは良い事を教えてもらったね」と仰いました。
その時に、常に仕事というモノは考えながら行うモノ、そして最初の導入部は何でも要領
良く出来ず、時間が掛かるのは当たり前、でもその手間を端折るのではなく、苦労する事で
身に付く、という事をその時に学びました。
恐らく、お客さまへの道筋を事細かく教えて頂いていたら、なかなか道順などをその後、
覚えたりする事は出来なかったでしょう。
苦労して、汗かきながら辿り着いたからこそ、道を覚える事が出来るのだと思いました。
お客様の店を出て、近くの公衆電話で帰社の連絡をしました。
ちょうど、部長が電話に出られました。
「お前、ずいぶん遅くなってるじゃん」
「どうもすいません、ずいぶん迷ってしまいまして」
「ふん!で、道順は次から大丈夫だな?」
「はい!もう覚えました」
「あっ、そう。じゃっ、お疲れさん!」
僕は車を運転して帰りながら、部長は本当にそこまで考えていたのかなと思っていました。
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