会社に入社して2年目の冬、私には第1子が誕生しました。
その日は大晦日だったので、年が明けて1月の5日、会社の
仕事始めの日の夕方でした。
社長から内線があり、すぐに社長室に来いということでした。
何事かと少々緊張もしましたが、私は子供が生まれたばかりだし、
社長は仲人だったので、ご祝儀でもくれるのかと浮かれていました。
社長はそんな甘い人間ではありませんでした。
部屋に入ると直ぐにソファーへの着席を命ぜられました。
私はその時のことを、今でもストップモーションのように覚えて
います。
座ろうとした瞬間に社長は言いました。
「今回は子供さんの誕生おめでとう、ところで、、、」
私はやはりその話かと思い、深く座ろうとした瞬間でした。
「ところで君には来週から大阪店に転勤してもらうから」
ほぼ座る寸前だったので私は、
「へっ、あああ~」
などと意味不明の言葉を発していました。
その言葉を社長は了承してくれたものと捉えたようで、(もちろん
端から選択権などなかったのですが)いかに大阪への転勤が
私にとって有益なものかという話をしていました。
以前の会社は福岡の会社のため、ほとんどの社員が九州の出身者でした。
九州の人間は意外と九州から出たがりません。
特に九州の大学を出た人間は顕著です。
事実、転勤の話が持ち上がると、会社を辞める人間が居ました。
ですから、転勤は半年から1年掛けてじわじわと話がくるもの
でした。
まあ人を見たんでしょうね。
こいつはこんな感じで言ったほうがいいだろう、みたいな。
実際その通りでした。
社長室から出るときの私は希望に満ち溢れていました。
大阪に行って頑張るぞ!
私の大きな頭は、大阪に行って奮闘する自分の姿を想像して
パンパンになっていました。
早速次の週に大阪店へ転勤しました。
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