きっとTAJIRIと僕は20年前、同じ時間をこの場所で共有していたはずだった。
8月の頭の平日に”西の聖地”博多スターレーンで開催された、TAJIRI率いるWNC
(WRESTLING NEW CLASSIC)の会場に僕は何だか妙に懐かしさを感じ、
心地よかった。
そうだ、考えてみたらTAJIRIは41歳で、僕は40歳。
同じ時期に、故郷熊本から福岡の大学へと進学した我々は恐らく同じ時期に博多スター
レーンに通い、すれ違っていたはずである。
ただその時と違うのは、僕はファンのままで彼はレスラーということだ。
(まあ、それ以外に違う事があるとは思うが、それは置いといて)
あの頃のスターレーンでは様々な団体が興行を行っていた。
正直、その頃の僕は全日と新日はTVで見れるからそれ以外の、会場に行かないと見れ
ないマイナーな(いわゆるあの頃の言い方で言うとインディー)団体を主に観戦していた。
その中でも特に好きな団体は、ジャパン女子、ユニバーサル、FMWであった。
ジャパン女子のアイドル級のルックスの子が見せる相手の技を受ける時の、非常に勝気な
表情にクラスメートの女の子たちとは違う何かを感じ、ユニバーサルでメキシコのルチャ
ドール達が繰り広げる、見たこともない空中殺法にジャベ(関節技)の数々が確実にマニア
のハートをくすぐったし、大仁田率いるFMWのハチャメチャな何でもありに本当にプロレ
スって奇人変人が多くて、最高だなと思ったものだった。
そして20年が経ち、今回のWNCの大会でその全てを久しぶりに見る事が出来、僕はとても
満足だった。
WNCの今回の興行は非常にメリハリがついており、観客を飽きさせなかった。
決して、ハイスパートレスリングの試合ばかりでもなく、だが一切間延びすることなく、
あっという間に21時を過ぎてしまった。
ご当地団体の華☆激、磁雷矢率いるルチャ学校などの力も借りながら、バラエティに富んだ
ラインナップが組めた事が大きかった。
少々脱線するが、僕の中では最近オジーの”bark at the moon”のギターリフが流れると、
「オラが町の華☆激の出番だ」と認識するようになっており、今回も対抗戦を楽しめた。
今回の華☆激の試合は、小川の「YAMAKASA」から、アステカの聖☆スプラッシュでフィ
ニッシュという流れは非常に説得力があり、盛り上がった。
惜しむらくは、相手側のWNCの若手がもう少し受けを磨いて欲しいかなと思う。
今回の興行の僕なりのベスト3を上げてみたい。
3位 エル・イホ・デル・パンテーラ
お父さんは20年前、ユニバーサルのリングにも上がっていた天才空中戦士。
その空中でのフォームなども父親そっくりの美しさで、本当に20年前を思い出させた。
特にセカンドロープとトップロープの間をすり抜けての、場外へのトペ・コン・ヒーロとい
うのはこの一族のみのお家芸である。
思わず、昔のユニバのようにお捻りを投げたくなってしまった。
2位 レザーフェイス
古くはFMWにも上がったことがある怪人。
相変わらずチェーンソー全開で観客席を走り回る姿は久し振りに怖かった。
(が楽しかった)
そして子供が泣き出したり、みんなが楽しそうに逃げ回るのが、何とも嬉しかった。
(こんなエンターテイメントは他にないぞ)
1位 華名
まあ、これは贔屓で(笑)でも彼女の力は大きいよ。
確か20年前にスターレーンで男女混合マッチというものを初めて見たけど、この形式は
女性が余程上手いレスラーでないとスイングしないように思う。
そういう意味でも華名の功績は大きい。まあ、贔屓だけど。
あと秀吉(これも福岡出身)のごつさは際立っていた。帰ってくれば良いのに。
試合後の挨拶が終わり、TAJIRIがゆっくりと静かに会場の北側の端を見つめる。
そうだ、そこには20年前の自分の居場所があったのだ。
今の自分はリングの中心にいる。
こみ上げる感情は、ここまで来たという感慨と、あの頃と何も変わっちゃいないぞ、という
思いか。
果たして20年前のTAJIRI少年は今回のWNCの興行を如何様に堪能したのであろうか。
お客さんも良かった。
WNCはもちろんまだまだ新興団体である。
決して一般的ではない。
だからこそ、いつものキレイどころのお姉さんたちもおらず、観客席はプロレス好きの変わ
り者の大人か、子供だけだった。
それが最高に心地良かった。
そうだ、僕が見に行っていた20年前の博多スターレーンにも客席には変な人ばかりだった。
僕もその奇人変人たちの仲間なのだ、20年経っても。
WNCは、どこか懐かしくて、でも新しくて、そしてプロレス好きには堪らない、そういう
団体だと思う。
是非、また行きたいと思った。
華名のタンブラー買っちゃいました!