平成4年は天龍源一郎にとって、とてもタフでハードな1年だった。
5月になるとSWSでクーデターが起こったからだ。
谷津嘉章をリーダーとする道場・檄&パライストラ連合軍はリングの内外で、天龍を
肉体的にも精神的にも土俵際まで追い詰めた。
団体としての体を既に成さなくなったシリーズ最終戦の後楽園ホールで、予想だに
しなかったことが起こる。
試合後、観客が帰らないのだ。
何故か?
それは天龍源一郎の今後を心配するファンの熱き思いからであった。
天龍源一郎は、SWSはどうなってしまうのか、、我々ファンは心配で堪らなかった。
現新日レフェリー・レッドシューズ海野が控え室に走る。
「社長が出てこられないとお客さんは帰りませんよ」
控え室を出て、リングへと向かう天龍の目は潤んでいた。
歩みながら天龍はどういう心境だったのだろうか。
そしてファンに向かって、心なしか湿り気を帯びた声でこう言う。
「俺は、、、俺はお前たちを決して裏切らないから。
だから今日のところは帰ってくれ。
俺は絶対に嘘をつかないから。
約束する。
お前たちのことを、俺は絶対に裏切らないから」
2年前に全ての実績を否定されて孤独に戦ってきた男の背中を、ファンは温かく
見守り続けていたのだ。
そして、そんなファンを天龍源一郎は未だに決して裏切らずに、リングに上がり続ける。
プロレス万歳。
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